コラム
最新の不妊学会レポート
不妊カウンセリング学会
第35回不妊カウンセラー講座に参加してきました。
カウンセリング方法から、最新の不妊治療について幅広い講座でした。
その中で、いくつかご紹介します。
1、 カウンセリングについて
今回は、ルーテル学院大学大学院 白井幸子先生が講演を行ってくださいました。
従来のカウンセリングは受容・共感といった、相手の話に耳を傾け、受け入れる等でした。しかし、それでは患者さんの問題解決まで到達出来ませんでした。
そこで、最近採用され始めたのが、「NLP―Nuero Linguistics Programming―神経の言語を用いて自分の人生が自分が望むようにプログラミング化する」という考え方です。
神経の言語は、自身が思っている考え方とは別の心の底に眠っている本心を聞きだし言語化するものです。それを「メタ」といいます。その考えが分かることによって、自分が本当はどうしたいのか、どうなりたいのかが明確になります。
NLPでは、そのメタが明確になるように順を追って聞き出し、さらには目標を明確化するために、次の順で話を進めていきます。
① あなたは何を到達したいと望んでいますか。
② それを手に入ると、あなたにはどのようにそれが分かりますか。
③ いつ、どこで、誰とあなたはそれを到達したいですか。
④ 望んでいる目標を得ることは、どのようにあなたの人生の他の側面に影響しますか。
⑤ 今あなたが望む目標を得るのを妨げているものはなんですか。
⑥ あなたがすでに持っているリソース(資源)の中で何がこの目標を達成すのに役立ちますか。
⑦ 目標を得るためにどんな追加のリソースが必要ですか。
⑧ そこへどのように到達できるでしょうか。
⑨ あなたの目標は達成する価値がありますか。
以上の項目で話を聴く事で、自身のメタが見えてきます。最後に「それはあなたに何を
してくれますか。」という最終確認をしていきます。
これは、不妊に悩んでいらっしゃる方はもちろん、様々な悩みを抱えている方にも有効な方法と言えます。
白井先生は、こう言った理念の元、不妊カウンセラーは患者さんに対し、温かく受容的な人間関係の中で、自己受容と自律した歩みを目指し、問題解決の可能性を共に探ることが重要であると話されていました。
2、不妊治療の基礎知識
たちかわ総合治療センターにも不妊で悩まれて来院される方が多くいます。病院へ通院するも思った結果が得られない、まだ病院へは行っていないが体質を変えたい方など、様々です。
事前に患者さん自身が本やインターネット、口コミで得た知識は膨大で、感服するほどです。しかし、中には偏った知識をお持ちの方もいらっしゃいます。そんな方に正しい知識と先生によって内容が異なることを得てほしいと高橋ウイメンズクリニックの高橋敬一先生はおっしゃいます。
その方の講演を紹介します。
1) 基礎体温表の呪縛
真面目な女性ほど、手元にある基礎体温表で排卵やホルモン状況をすべて解決・説明しようとします。基礎体温表では、排卵日(最終低温日)の予測は難しいです。最終低温日に排卵するのは22%、前日排卵は5%、低温期から高温期に移行する間の排卵が最も多いと言われます。
基礎体温表は、単なる目安であり、基礎体温表単独での判断出来ません。例えば高温期での一時的な体温低下はよくある事や、妊娠していれば必ずしも高温期とは限りません。低温期でも妊娠する事は珍しくない事。基礎体温表をつけることに命賭けになってはいけないと話しておりました。
2)人工授精の豆知識
①採精について
不妊治療は女性だけはなく、男性の協力も不可欠です。人工授精の際に男性の精液を採取しますが、なるべく濃い精子が良いだろうと1週間禁欲しもらい採取しよう考える方は多いかと思います。しかし、精子の寿命は48時間ほどです。そのため3日以上の禁欲は、濃い精液になりますが、死んだ精子も含まれており、良好な運動精子の割合が低下してしまいます。
②排卵誘発剤について
女性の排卵障害による月経異常や不妊に対する治療として排卵誘発法が行われます。排卵誘発法にはクロミフェン療法やゴナドトロピン療法などがあります。
クロミフェン療法は、卵巣の発育が促進され、排卵を起こします。しかし、クロミフェンは抗エストロゲン作用があり、頸管粘液の分泌低下や子宮内膜発育不良を引き起こします。長期投与は避けられます。
ゴナドトロピン療法は、クロミフェン療法が無効だった場合に行われます。ゴナドトロピン療法は卵胞の発育を促進させ、排卵を誘発させます。この療法もまた、卵巣過剰刺激症候群や多胎妊娠を発症させる副作用があります。しかし、あるデーターではクロミフェン療法よりもゴナドトロピン療法の方が妊娠率は1.5倍~2倍と言われています。
③妊娠率とステップアップについて
人工授精を行って妊娠できる確率は約10%と言われます。これは医師によってやや数値は変わります。一般的には3~6周期程度施行して妊娠が得られない場合、体外受精や顕微授精へとステップアップしていきます。しかし、中には100回を超える人工授精の結果、妊娠した例もあるそうです。
3)卵子の老化
身体が年をとるように卵子も少しずつ年をとります。女性は誕生してから原始卵胞(卵子の素のようなもの)が約200万個あります。しかし月経が始まる思春期の頃には約20~30万個まで減少します。さらには1回の月経の周期に約1000個が減少しており、1日30~40個が減り続けます。つまり、排卵では1個が消費されるのではなく、たくさんの卵子が消費されるということです。
また年齢と共に卵子の膜が硬くなります。せっかく受精卵ができても卵割がしにくくなります。そうなると細胞分裂が出来なくなり育たないという結果になります。
年齢としては、妊娠率30代前半でやや減少傾向に入り、30代半ばで減少傾向に加速します。
高橋先生は、最後に「そもそも日本人は10代の時に、『妊娠しやすいから避妊をしなさい。』と教えられ、そしてセックスは恥ずかしいもとの教えられてきました。しかし、不妊については教えられていないのが現状です。また、晩婚化が進み、性生活の回数は減少傾向にあります。そのため、日本は世界からみて夫婦の性生活の回数は世界最下位なのです。どうか、正しい知識を持って、不妊治療に臨んでほしい。迷った時は医師に相談してほしい。」と話されていました。
以上が学会のレポートでしたが皆様のお役にたてれば幸いです。